―― この度の地球への無事生還、おめでとうございます。まずはPEVO星に降り立った数少ない地球人として、PEVO星の様子をお聞かせください。

VP PEVO星に着いてすぐに感じることですが、町中シナモンの香りに溢れています。PEVOは無臭だといいますが、明らかにシナモンの香りで満ちています。後に分かったことですが、あれはPEVOの体臭です。特にPEVO同士が食卓を囲んで形而上的な会話に熱中する時、男女の肘にある腺から分泌されるものの匂いのようです。PEVOはこれを否定していますが。

―― 地球人の感覚では理解の難しい、スポットのある世界についての印象は?

VP スポットのある世界は構造的に平和で満ち足りています。神が隠されていないために「神を知る特権者」が存在できません。偶像も存在できず、立証不可能な脅威に通ずる権威構造も成立しません。天罰は超越的に訪れることができず、神への直接的な恐れも形成不可能です。従って平和でない理由や、平等でない理由が作れないのです。

―― ところで、あなたがPEVO星人に拉致された事実を素直に語らない理由は何ですか。

VP 私が真実を話したとしてもエージェント・スカリーが否定するでしょう。

 ここで「エージェント・スカリーとは何か」と尋ねたが応答はなかった。そこでPEVO1号に問い合わせたところ、スポットからの返信許可が必要だという。その許可が下りるまでに数日を要した。PEVO1号からの回答は次の通りだ。

エージェント・スカリーについては、2つの意味がある。

1. ワルダ・セクレタについての第25章、56節にわたる制約。 2. スポットが任命するコレックコンタスの責任者。ソルド、ミール、グロップ全ての権限を有する。

 PEVO語辞典によれば、ワルダ・セクレタは「全宇宙の秘密が隠されているといわれる伝説の鉱物。一般に秘密をさして使われることもある」という。つまり何らかの秘匿事項の存在を示しているのではないか。

 そしてコレックコンタスとは「テラヴスとの第2次接触(音声接触)。相互利益を前提とした会話。通信事務」とある。

 ソルドはPEVO星人の三大種族「ワオト族の宝」で「中央制御室」。

 ミールはPEVO星人の三大種族「ヤマタイ族の宝」で「不特定回遊システム最終兵器をさす場合もある」。

 グロップはPEVO星人の三大種族「ビャン族の宝」で「創造計算システム」である。

 つまりエージェント・スカリーとは、PEVO星の三大種族が保有するシステムの全権限を有し、かつ地球人と音声でコミュニケーションを取る責任者ということになる。だから仮にヴォルキス・プロラデュークが真実を述べたとしても、エージェント・スカリーが何らかの形で地球人に向けてそれを否定する工作を行う。よって「本当のことを言うのは面倒くさい」とヴォルキス・プロラデュークは言いたいのではないのか。なるほどPEVO1号の言葉を借りれば、テラヴスは堕落している。

 ちなみにスカリーという名前の地球人とは全く関係ないらしい。ではヴォルキス・プロラデュークとの交信記録を続けよう。

―― ご自身のライブの共演者としてPEVO1号を選んだ理由を教えて下さい。

VP 愚問です。あれがテラヴスに出来ると思いますか?

―― では、高円寺HIGHにおける返還の儀式の印象はいかがだったでしょうか。

VP PEVOたちは驚いていました。なぜならテラヴスのライブハウスはツヴァルクベセルを着たまま楽屋まで行ける構造になっていないからです。それはともかくとして、簡易式とはいえ良い儀式だったと思います。PEVO星で行われた場合は、あれがたっぷり40時間は続きます。

―― 地球でもPEVO星並の儀式が行われることを期待します。PEVO星人は再度、あなたを母星に拉致することを画策していますが、その際の返還の儀式にはどのように臨まれますか。

VP スポットの望みに従うまでです。

―― いちいち拉致とか返還とか面倒なので、いっそPEVOに加入してしばらく活動してみるというのはどうでしょう。

VP PEVO星では、「いっそ~してみる」という概念は生理現象を抑制し、限界に達した時にのみ使われると記憶しています。

 以上で交信は終了した。特にスポットに関する言及は興味深かった。仮に彼の言うスポットのある世界の解釈が正しいのなら、PEVO星人が地球を侵略する真の目的は、確かに我々の考える侵略とはまったく別の意味になるのかも知れない。

 彼らが破壊を試みているのは物質的なものではなく、狙っているのは交換価値のある富の収奪ではない。彼らの概念における“征服”は、地球上では決して成功しないはずだが、地球人にとってそれは本当に幸せなことなのか。これ以上書いてしまうと、またあいつは頭がオカシイと人が離れて行くので、それはまた時を改めたいと思うが、その代わりに今ここで言いたいことが2つある。

 まず、持っていなければPEVOのCDを買いなさい。

 そして大晦日は高円寺HIGHに来なさい

 それではみなさん、良いお年を。

BUY! PEVO

BUY! PEVO

(このインタビューの全文をpdfに再編集し、近日中にパブリックドメインのファイルとして公開することを予定しています。また、同じpdfファイルの内容にショップ・メカノ中野店長の推薦盤コーナーをプラスしてプリントし、メカノ店頭に置いてもらうことも計画しています)

―― じゃあ、もう少しいろんなテラヴスにサイン波をお見舞いする方法を考えましょう。PEVO1号はヴォルキス・プロラデュークのライブ(#)に出演されていますが、あれはどういう流れなんですか?

# 2012年06月6、7、8日に、東京・五反田のゆうぽうとホールにて行われた「PHONON 2555」のこと。PEVO1号は恒松正敏グループの荒木康弘とともに参加し、シンセサイザー、ギター、コーラスを担当した。

4号 まさかヴォルキス・プロラデュークのライブにPEVO星人が呼ばれるとは、思いもしなかったですよね。

1号 まあ、突然電話がかかってきたんですけどね。

―― 1号さんは普段どこにいらっしゃるんですか?

1号 地球基地です。

―― 地球基地に直通の電話番号があると。

1号 そうです。で、あの五反田のライブの後に、またPEVO星にヴォルキス・プロラデュークをご招待したんです。その後に行なわれる高円寺HIGHの儀式のために。

―― あの五反田のゲスト出演は拉致するためだったんだ。さすが宇宙人、抜け目がないですね。

1号 あ、ちょっと待って下さい。我々からすると丁重に招待しているつもりなんで、何で拉致って言われるのか分からないんですが。PEVO星にいる期間もそんなに長くなくて、2、3日でオッケーだし。拉致と言われるのは心外です。

―― それは立場によって見方も違ってくる話だと思うんですが、彼とは普段どういう感じのお付き合いなんですか?

1号 1stを出してすぐに、万国点検隊というファンクラブのツアー・イベントがあって、僕もそれに行きました。地球基地からそのまま飛行機に乗って、バリ島まで。

4号 えっ、それマジですか? 変装もしないで?

1号 トランジットですごいジロジロ見られましたけど。

4号 そりゃあそうですよ。しかし、さすがに1号は付き合い長いですねー。

―― じゃあヴォルキス・プロラデュークもああいう性格ですから、表向き迷惑なふりをしているだけで、面白がっているんじゃないですか、内心。

1号 そう言えば、今回の儀式もビデオ出演で済ませようと思っていたんですよね。でも「ツヴァルクベセルに入って出る」って自分から言い出しましたから。あれは特別仕様のツヴァルクベセルなんです。儀式が完了すれば外れる仕組みですが、逆に儀式が完了しない限り絶対に外れないという。

―― 分かりました。じゃあこれからも容赦なく招待していきましょう。返還の儀式の回数に制限はありますか?

1号 いいえ。いちいち丁重にPEVO星へ招待すればいいだけです。

―― いつもどこで招待しているんですか?

1号 それがなかなか難しいんですね。最近は事務所側に警戒されているらしくて。

―― たった一人しかいないタレントだから仕方ないでしょうね。お金になれば拉致だろうが招待だろうが、事務所はなんでもやると思いますが。

1号 あ、そう言えば五反田のライブが終わった時に、ヴォルキス・プロラデュークのマネージャーの湯本さんが「ああ、PEVOさんのCD物販に置いておけば良かった!」って言ってましたね。

4号 じゃあ物販コーナーでPEVOのCDを売りましょう。そこでツヴァルクベセルを持って待っていればいいんですよ。

―― 年明けに渋谷公会堂でインタラクティブライブをやるらしいんですけど、そこで強引に招待するのはどうですか? ライブ後は疲れて弱っていますから、抵抗されずに招待できるんじゃないですか。

4号 あ、それいいですね。それでいきましょ。

1号 じゃ、その方向で。

―― じゃあ今後のご活躍と招待の成功を祈っています! 今日はありがとうございました!

1号/4号 ありがとうございました!

話が進むうちに段々くだけてきたPEVO星人

話が進むうちに段々くだけてきたPEVO星人

 こうしてPEVOとの接近遭遇は終わった。地球の侵略を目的にしている割には、案外いい宇宙人だった。言い換えると、いったい地球の何を侵略しようとしているのか。それは謎のまま終わった。

 しかし、PEVO星人は確かに実在するのであり、彼らの住む世界は誰かの想像力の産物ではない。一部でPEVOの世界観はヴォルキス・プロラデュークの創作だと信じられているが、当然ながらそれは誤りだ。

 PEVOの存在が知られるようになったのは、P-MANIAと呼ばれるP-MODELのコピーバンドコンテストに出演して以降のことである。この第2回目のコンテストでPEVOは優勝し、それを受けてヴォルキス・プロラデュークが彼らの1stアルバムをプロデュースすることになった。という事になっている、少なくとも地球では。

 だが実際にはヴォルキス・プロラデュークの丁重な招待を狙って、PEVOはそのコンテストに出場したのだ。そしてまんまと狙いは成功し、ヴォルキス・プロラデュークはPEVO星でアルバム制作を命じられる。それが真相である。

 気になるのは、ヴォルキス・プロラデュークが自身の拉致、あるいは招待された経緯について決して語らないことだ。のみならず、まるでその事実すらもなかったかのように振舞っている。それは何故か。PEVOとの共演は「拉致されて止むを得ない体でやっているわけで、そこは見逃してください」という事なのだろうか。

 では、宇宙人による拉致という国際安全保障上の問題や、自身がその片棒を担いでいることについてはどう説明するのだろう。あるいは、頭がオカシイと思われるのが嫌で、宇宙人の話はしないと決めたのだろうか。それなら私にも分からないではない。

 私はヴォルキス・プロラデュークとの接触を試み、ネットを介して質問を行った。以下はその交信記録である。

―― その前に、みなさんのファンから質問をいただいているのですが、これまでの流れで触れられなかった疑問が沢山あります。それを伺わせていただきます。まず「地球の音楽ではどんなジャンルがお好きですか?」という質問から。

4号 PEVO人にはジャンルみたいな概念はないです。ジャンルで音楽は聴かないですし。

1号 ただ、PEVOの1stはテラヴス向けに作られたわけです。そのためにヴォルキス・プロラデュークを招いたわけですから。それが「テラヴス風音楽」として、最近ではPEVO星でも親しまれつつあります。そういうものがジャンルと言うなら、PEVO星にもあるかも知れません。

―― PEVOの1stはテラヴスの音楽を参考にして作られたと聞いているので、それは音楽文化の輸出でもありますね。では次です。『今回の再発1stの最初に入っている「テキーロ」の、「ワンニャーン」「ニャウーン」という言葉は地球語でどのような意味ですか?』

1号 PEVO人の造語です。「テヘペロ」や「あげぽよ」といったテラヴスのギャル語のようなものです。1号には理解できませんが、3号は“マガゾフエデュランセッフェン”で回遊しているので、その辺の事情に詳しいです。

―― マガゾフというのは、PEVO星の歴史や、そのデータを保存してある装置のことですね。で、そのデータを集める人がマガゾフエデュランセッフェンと。いちいち長くてややこしいのは何故ですか?

4号 それは我々から見た地球語も同じですけど。

―― では次の質問です。『PEVO星人の1~5号は何の順番で決まっているのか?』

1号 1号から3号まではスポットが決めました。その他の4号、5号は1号が決めました。理由は5号は5号っぽく、4号は4号っぽかったからです。

―― えらい適当な決め方のようですが、次の質問は高尚です。「球・立方体・正四面体、PEVO星の皆さんがこの中で最も高貴さを感じる図形はどれでしょうか?また、それ以外でもPEVO星社会で重要な意味を持つ図形・記号などありましたらお教えください」。

1号 テラヴスと一緒で個人差があります。1号としてはやはり球体でしょうか。1号にはスポットが球体に見えるからです。

―― 4号さんはどうですか?

4号 んー、僕はあんまり考えた事ないです。

―― でしょうね。

4号 えっ。

―― 次からはライブに関する質問が続きます。

1号 分かりました。

高円寺HIGHで2012年10月8日に行われたヴォルキス・プロラデューク返還の儀式については、asaさんのイラストレポートに上手くまとまっています。

高円寺HIGHで2012年10月8日に行われたヴォルキス・プロラデューク返還の儀式については、asaさんのイラストレポートに上手くまとまっています。

―― まず「2号が演奏していた光る定規は?」

1号 ”Eowave Ribbon”でググってみてください。

―― はい、シンセサイザーのリボンコントローラーですね。では次の質問。「大阪のライヴで4号さんから青く光る物体を頂いたのですが、これはひょっとしてチップルですか? テラヴスが食べてもマップルにはなりませんか?」

4号 チップルではありませんのでマップルにはなりません。食べたらお腹が痛くなると思います。

―― 次も似たような質問です。「先日のライブの時に、玩具の銃から緑色の軟らかい円盤が発射され、友人のおでこに直撃した後、私が回収しました。あの円盤は何ですか? コンペリタンチップルという説も出ていますが。持っているといいことありますか?」

1号 持っていると記念になります。

4号 なりますね、うん。

―― 実はナーフっていうシューティングトイの弾ですよね。スポンジ製で柔らかい。質問を続けます。「白い無菌スーツの装着者は誰ですか?」

1号 彼らはスルホロバスと呼ばれ、PEVO人でもありません。

―― じゃ、何人ですか?

1号 誰でもないことにしておいて下さい。

スルホロバスと呼ばれる人その1(イラスト提供: イオさん)

スルホロバスと呼ばれる人その1(イラスト提供: イオさん)

スルホロバスと呼ばれる人その2(イラスト提供: イオさん)

スルホロバスと呼ばれる人その2(イラスト提供: イオさん)

―― 分かりました。誰でもありません。次は「ライブで手を犬の形にしていた仕草は何か特別な意味があるのでしょうか」という質問です。

1号 “アクエリアン”を称えるサインです。

―― ちなみにアクエリアンとは「ポクテキの誇り。スポットへの忠誠と勇気の証」とPEVO語辞典にはありますね。次です。「私もヴォルキス・プロラデュークのようになりたいのですが、通常テラヴスがヴォルキスを曲げられるようになるにはどのような手続き、訓練が必要ですか? 専業主婦でも可能ですか?」

1号 タイムスコープ報告によりスポットが決めます。ヴォルキスの曲がり具合は訓練で得られるものではなく、先天的なものだという説が有力ですので、専業主婦でも可能でしょう。

―― しかし生まれつき資質を持っていなければダメと。そんな曲がった資質はない方が幸せかも知れませんね。ところで1stアルバムのタイトルですが「PEVO/PEVO」のようにクレジットされていたり、単に「1st」としか表記されていない事が多いわけですが、ジャケットには「CONVEX AND CONCAVE」と書かれています。どれが正しいのでしょう?

1号 正式には「CONVEX AND CONCAVE」です。

―― では最後の質問です。「カレーはライス派ですか? ナン派ですか?」

1号 カレーはライス派です。

4号 僕もライスです。

―― 1号はカレーがお好きなようですけど、PEVO星にもカレーはあるのですか?

1号 いいえ。テキーラもそうですけど、カレーにはテラヴスに来てからハマりました。

―― 前々から疑問だったんですが。再発盤はメカノ専売ですけど、宇宙人だったら流通や電波を乗っ取るとかできるでしょう? 今はダウンロード配信だってあるし。

1号 いやいやいや。CDであるところに意味があるんですよ、あれは。

4号 そ、そうなんですよ、CDじゃないと意味が無い。

―― 何でですか? 実はあの店の奥にPEVO星につながるバックドアがあるとか。

1号 あー、うーん。

―― そういや、あの店長も怪しい感じですよね。

4号 それは否定しませんけどね。

1号 はい、まったく否定しません。

PEVO1号(左)、怪しい中野店長(中)、PEVO4号(右)

PEVO1号(左)、怪しい中野店長(中)、PEVO4号(右)

―― それにしても侵略するなら演奏活動なんて必要ないじゃないですか。素直に街を焼きつくすとか、人類皆殺しにするとか。音楽だなんて、まどろっこしくないですか?

1号 実はあのCDには“サイン波”が入っているんですよ。シンセに入っているようなサイン波ではなくて、催眠光線のような、特殊な波長の信号です。地球版を出すときにそれがバレないように色々配慮しています。

4号 へーっ。そうだったんですか。へー。

―― へーって、あなたPEVOのくせに何で知らないんですか。

4号 いや、僕は3号がライブに出ないって言うから、突然「お前、とりあえず高円寺に来い」って言われたんで。このバンドのことは良く分かってないんですよ。まさかヴォルキス・プロラデュークと一緒に出ることになるとは思いませんでしたから。

―― あなたはヴォルキス・プロラデュークが嫌いですか?

4号 いやいやいや! そんなことは決して! 僕は彼ほど上手くヴォルキスを曲げられないんです。ただそれだけ。

―― その「ヴォルキスを曲げる」というのは?

1号 地球語に直訳するとそれ以外にどうしようもないんですが。ヴォルキスはボイス、音とか歌という意味なんです。それを曲げるみたいなことですね。

―― つまり音声をコントロール出来る人、と。

1号 そうかも知れません。

―― 1stアルバムのヴォルキス・プロラデュークの声はピッチが高くて、2度ほど下げると、地球で聴く彼の声に近くなるんですが。どういう意図でこんな処理になっているんでしょう?

1号 それはPEVO星と地球の大気が異なるからですね。

―― ヘリウムガスを吸うと声のピッチが上がるみたいな?

4号 そうです。地球の大気は音が遅いんで、上手くピッチが上がらない。だから僕も苦労していて。でも地球の大気に慣れたヴォルキス・プロラデュークがPEVO星に来ると、もう軽々とヴォルキスを曲げてしまうんですよ。

1号 で、まあ儀式にはヴォルキスを上手く曲げる人が必要だというので「前に連れてきたあいつをまた連れてこい」というスポットの司令があったんです。

―― 「前に連れてきたあいつ」というのは、ヴォルキス・プロラデュークのことですね?

4号 そういえば、あの人、こないだ気になることをローディの子に言ってましたよ。「いつもおかしな現場ばかりでごめんね」って。

1号 お、おかしな現場って……。

―― ヴォルキス・プロラデュークにローディいるんですか。

1号 楽器周りの世話をする人が必要だというので、一緒にPEVO星へ招待したんですね。あの人は自分でギターの弦も張替えられないので。テラヴスは堕落していると思います。

―― あの人が特別やる気ないだけで、地球の成功しているミュージシャンはみな勤勉です。

4号 で、あの、そんなにおかしいですか? 我々の現場って。

―― だって、そもそも宇宙人がライブっておかしいでしょう。

4号 そういえばお客さんも、なんか気が付くとニヤニヤしてるんですよねえ……。

1号 あれ気になるよね、なんだろ。

4号 僕ら真面目にやってるつもりなんすけど。

―― じゃ、先日のライブ、というか儀式でのお客さんの印象はイマイチ?

4号 いえ、僕は生まれてこのかた、あんな人がいっぱいいて盛り上がったライブには出たことないですから。

―― 4号さんはPEVO星でライブの経験は?

4号 ないです。今回もホントにちょっとだけ、急遽バイトなんで。

―― にしては上手いですよね。

4号 あ、ありがとうございます! ヴォルキス・プロラデュークにも褒められたんですよ、ステージ終わって楽屋帰ったら開口一番「良かったよー」って。

―― じゃ、別にあんな地球人いらなくないですか?

4号 いやいやいや! あの人が出るとトーンが上がって、やっぱりすごいと思いましたもん。あの人はすごい!

―― まあ、あの人はああ見えても、日本ではちょっとは名の知られたミュージシャンなので。それはご存知でしたか?

1号 はい。ただ、テラヴスにあそこまで人気があるとは知りませんでした。我々はヴォルキスのよく曲がる人を探していていただけなんですが。

4号 リハスタにも来られたんですけど、その時に「猫背になっちゃダメだ! 胸張ってやりなさい、PEVO人らしく!」って。ハイ分かりました!って。まあ、そのおかげもあって、あの会場の盛り上がり。

1号 お客さんも満員だったし。我々の地球侵略作戦は大成功でしょう。

―― いやいやいや。まだまだ全然ダメですよ、あれくらいの動員じゃ。PEVO星には売上とか動員数を報告していないんですか?

1号 PEVO星人はそういう数には関心がないんです。どういう人間に植えつけたかが重要なんであって、常にPEVO星人は数値で客観的に見ようとはしないので。

―― とはいえ、もうちょっと有名になってもらわないと私が困るんですよ。「PEVO」って言っても話が通じない上に、友だちが減る。

4号 じゃあ、どうやったらもっとウケるか、ちょっと一緒に考えましょうよ。

1号 正直言うと、もう少しいろんなテラヴスにサイン波をお見舞いしたほうがいいとは思っているんですよね。

1号 さっきの映画の話に戻ると、我々が地球の作品で興味を持ったのは『サボテン・ブラザーズ(#)』なんですね。PEVO星のボルフェスツェルゴビア出身のポクテキが、この映画に出てくるサント・ポコ村で1975年に消息を絶っているんですよ。

# 原題は「Three Amigos!」。1986年に制作されたアメリカ映画。監督は『トワイライト・ゾーン』や、マイケル・ジャクソンの『スリラー』で有名なジョン・ランディス。エル・アポ率いる盗賊の脅威に怯えるメキシコの小さな村、サント・ポコを舞台に物語は展開する

―― 色々ややこしいですが、その「ポクテキ」って何ですか?

1号 PEVO人なら誰もが憧れる我々の召使で、同時に師匠でもある存在です。PEVO人は“ジェントカーロス(#)”の儀式を経て、ポクテキに生まれ変わります。

# 「変化の時期」あるいは「変化の瞬間」という意味。

4号 ヴォルキス・プロラデュークはこのポクテキに似ているので、PEVO人には人気があるんですよね。

―― 地球人の感覚で言うと「召使で、同時に師匠」という、PEVO人とポクテキの関係を理解できないんですが。

1号 テラヴスがそれを理解できないところが、我々には理解できないんです。地球上のものだと、人間と犬や猫の関係に似ているかも知れないです。

―― ますます分からないんですが、なんで憧れるんですか?

1号 ポクテキになると、相手がなんだろうがフォルメかないところとか。テラヴスの言い方を借りると、煩悩から開放されるようなところもありますが、それだけではありません。

4号 話を映画に戻していいですか?

―― ええ、どうぞ。

1号 『サボテン・ブラザース』に出てくるサント・ポコ村は、PEVO星の第3セクタにあるボルフェスツェルゴビアによく似ているんです。だから、行方不明になっているポクテキと、なにか関係があるんじゃないかと思っているんですが。

―― あの、メキシコにサント・ポコなんて村はないですよ。あの映画に出てくる架空の村ですから。

4号 ……ええっ。うそでしょ。

―― いや、ホントに。

1号 ううむ。

4号 じゃあシャボンは……。

―― どうしたんですか、二人とも急に頭を抱え込んで。

1号 あ、いえ、なんでもないです。話を続けましょう。

4号 ええ、どうぞどうぞ、もうお気になさらず。

PEVO星人から参考資料として渡されたPEVO語辞典。地球の紙とよく似たものに、日本語フォントで印字されていた

PEVO星人から参考資料として渡されたPEVO語辞典。地球の紙とよく似たものに、日本語フォントで印字されていた

―― “ゾイドコープ”についてお伺いしたいと思います。映画に似たPEVO星の娯楽と聞いていますが、地球ではヴォルキス・プロラデュークがアメリカ人役で出演していることで知られています。まず、地球人の彼が役者として抜擢されたのは何故でしょう?

1号 『アグナミスト√77』のことですね。それは“タイムスコープ報告(#)”に基づいたスポットの司令です。ゾイドコープは娯楽というより教育に近いものなんです。

# PEVO語辞典には「同化を目的に、その生命体を時間レベルで解体し、観察すること」とある。つまりヴォルキス・プロラデュークのデータを収集し、それをもとにスポットがゾイドコープの役者として彼が最適だと判断したのだろう

―― そのゾイドコープというものを是非観てみたいんですが。

1号 三次元の立体映像ですが、地球のそれとはまったく仕組みが違い、残念ながら地球上でお見せする手段はないんです。光は電磁波の一種ですが、今のところゾイドコープが使う帯域を地球上で上手く合成できないからです。

4号 1stアルバムの最後に『アグナミスト√77』のサウンドトラックが収められているので、それでテラヴスのみなさんは我慢してください。

―― 地球には『不思議惑星キン・ザ・ザ』という映画があるんですが、先日のライブでヴォルキス・プロラデュークが入っていた“ツヴァルクベセル”と呼ばれる小さな檻にそっくりなものが登場します。この映画はご覧になりましたか?

ヴォルキス・プロラデュークの入っていたツヴァルクベセルは、2012年10月8日の高円寺HIGHで目撃された。目撃者によればこのような形をしていたという(イメージ図提供:淡二さん)

ヴォルキス・プロラデュークの入っていたツヴァルクベセルは、2012年10月8日の高円寺HIGHで目撃された。目撃者によればこのような形をしていたという(イメージ図提供:淡二さん)

1号 ええ。ただしキン・ザ・ザを知ったのは、1stを出して地球で演奏活動を始めてしばらくたってからです。

―― そうなんですか。ではツヴァルクベセルとは何なのでしょう?

1号 ツヴァルクベセルは、PEVO星で流行しているテラヴスファッションなんですね。というのは、PEVO人から見ると、テラヴスは皆ツヴァルクベセルを付けているように見える。それをPEVO人が真似したんです。

4号 だから、あの映画(キン・ザ・ザ)には、過去に地球に訪れ、テラヴスに同化したPEVO人が関係していると睨んでいるんです。テラヴスには自分がツヴァルクベセルに入っている姿は見えないので。

実は地球上のホームセンターでは、ツヴァルクベセルに極めて良く似たものが売られている。これは一体何を意味するのだろうか?(撮影: あきのあかげさん)

実は地球上のホームセンターでは、ツヴァルクベセルに極めて良く似たものが売られている。これは一体何を意味するのだろうか?(写真提供: あきのあかげさん)

―― ええと、いま重要なお話がありましたが、PEVO人は地球人に同化するんですか?

1号 はい。ある程度地球にいると、徐々にPEVO星からのコントロールが切れてきて、PEVO人としての記憶が薄くなっていくのです。だから地球上には、かつてPEVO人だったテラヴスがいるはずです。

―― 今日は1号と4号に来ていただいています。2号はライブで拝見しましたが、ほかのPEVO人は?

1号 PEVO星に帰化したテラヴスのDJセイジも含めて、全部で6人います。3号はアニメを描いていて、5号はちゃんとした勤め人です。もともと3号が我々のボーカルなんですけど、ライブをやりたがらないんですよ。今回の再発盤に入っている1曲目は3号が歌っているんですが、ライブはナシという約束でやってもらいました。

―― 3号は何だかけしからんですね。スポットからお仕置きとかないんですか?

4号 地球にはスポットがないもので。それで仕方なく、ライブは残りのPEVO人で勝手にやろうという、そういう状況なんです。

―― PEVOの話によく出てくる、そのスポットというのは何ですか?

1号 唯一の神でもあり、我々の世界の頂点にある物体です。PEVO星人もその中から一人づつ出てくるんです。

―― それはPEVO人の生殖活動みたいなことですか?

4号 はい。フォルメくと自分の体内から“チップル”というのが出てくるんですよ。これくらいの。

―― チップルというのは?

1号 1辺が3センチほどの立方体ですね。それをフォルめいた相手に渡すんですが、相手がそれを受け入れた場合、そのチップルを食べるわけです。

―― それはどんな味がするんですか?

1号 味はほとんどないんですが、強いて言えば甘酸っぱいですね。

4号 地球で言うところの青春の味です。

1号 で、食べるとその瞬間にスポットから新しいPEVO星人が発生するんですよ。受け取りを拒否されたチップルは、専用サイトに送られ、“コンペリタンチップル”になります。これは“高速グロップシステムマシーン(#)”の中核となる半生命体です。

# 「グロップ」は地球で言うところの計算機のようなものらしい

―― ではコンペリタンチップルというのは、地球で研究されているDNAコンピュータのようなものでしょうか?

1号 それに近いものかも知れませんね。

4号 ただチップルを生成しても、チップルを渡した時点でその記憶が消えるので、覚えてないんです。誰にフォルメいたかも。

―― 地球人のように失恋の痛みは感じないわけですね。じゃあ、チップルを生成したPEVO人と、それを食べたPEVO人の遺伝形質はどうなるんですか?

1号 チップルが“マップル”となって、その中の情報がスポットに伝わる仕組みになっています。

―― ではそのマップルを生成するに及んだ2人に、新たなPEVO人を生んだという実感は?

1号 PEVO人がスポットから発生したことは分かりますが、個体認識はできません。それにスポットからPEVO人が発生した時点で、チップルを渡したことや、それを食べてマップルになった記憶も消えます。

―― じゃあ、PEVO人には地球上で言うところの親子の関係はないわけですね。

1号 そういう事になりますね。

―― そういうスポットのある世界のほうが、みなさんにとっては暮らしやすいですか?

1号 もちろんです。地球上にスポットが存在しないのは不思議でなりません。

―― まずPEVO星人が地球にやってきた目的を教えて下さい。

1号 はい。それは地球を侵略するためです。

―― えっ、あんたら侵略しに来たの?

1号 ええ。ライブでも「ワレワレのモクテキはチキュウシンリャクである」って言ってるんですけど。

―― それマジすか。止めてくれないかなぁ、迷惑だから。宇宙人の侵略とか今時ないですよ、SFだって。

中野ブロードウェイ2階「A-ライセンス」にて。店内はハロウィーン仕様。

地球を侵略に来たというPEVO星人。「A-ライセンス」の店内はハロウィーン仕様だった

1号 でも、着々と進んではいるんですよ。すごく遅いだけで。いろいろな情報も集まっていますし。

―― 進めなくていいですから。それで何をやっているんですか?

1号 10年に1人くらい拐っては還してみたいな。

―― 拐って還したら侵略にならないでしょうに。

4号 では侵略というのはどうすればいいんでしょうか?

―― まずホワイトハウスの上に円盤で現れてください。それで熱線なんかで建物を破壊するわけですよ。それが宇宙人の基本。

1号 我々もアメリカの調査は万全に行なっているつもりです。何度もアメリカ人をPEVO星に招待していまして。先日の儀式で返還したヴォルキス・プロラデュークはあなたもご存知だと思いますが。

―― あの人はですね、コテコテの日本人です。アメリカには日系の方も大勢いらっしゃいますし、日本にもアメリカ人はいますけど、あの人は足立生まれでコテコテです。

4号 それマジすか。

―― マジっす。実際、英語話せませんから。そういえば僕ら、いま普通に日本語で会話してますけど、何でですか?

4号 あの、これは地球語じゃないんですか?

―― 地球上でも、ほぼ我が国でしか通じないローカル言語の、日本語です。

4号 でも世界地図を見ると真ん中にあるんですけど。

―― あれは日本で売っている世界地図だからですよ。あのね、あなたたちは一体どういう諜報活動をしているんですか?

1号 ラジオとかテレビとか映画とかで、ねえ?

4号 僕はサンテレビで地球語を覚えました。

1号 ああ「おとなのえほん」とか。

4号 そうそうそう。あれは本当に勉強になったなあ。

―― 何の勉強ですか。

4号 あ、でも我々はテラヴス(#1)には“フォルメき(#2)”ませんから。PEVO人には男女の区別もないですし。

#1 「地球」あるいは「地球人」という意味 #2 日本語の「ときめき」とほぼ同じ

―― ではPEVO星人と地球人の婚姻例はないんですか?

1号 ないです。

4号 というか“スポット”があるので。

 宇宙人にインタビューすることになった。

 詳細については省略するが、PEVOに取り憑かれてからというもの、私にはまったくロクな事が起こらない。あまつさえ「ツヴァルクベセルが」「コンペリタンチップルが」「このフォルメきが」と短文投稿サイトにポストする度にフォローが減るという有様であり、つまるところ私は「あいつは頭がオカシイ」と皆に思われているのだ。

 だからこそ私は彼らとコンタクトを取り、この取材の約束を取り付けた。おそらくこれは世界的に見ても例のない試みであり、こうした記事を掲載しようという商業メディアも皆無であろう。当然ながら、私も宇宙人を相手にするのは初めてだ。しかし、これはやらねばならない。何故なら、こうして世間一般にPEVOの存在を知らしめる事が、私の名誉回復のために採れる唯一の方法だからである。

 「PEVO」というグループ名で音楽活動を行なっている宇宙人がいるのだ、なんとこの地球上に。彼らはPEVO星から来たと主張しており、時折地球上でライブ活動を行い、CDで音源を販売しているのである。

 そのPEVO星人から指定された接近遭遇の場所は、中野ブロードウェイ3Fのショップメカノ。PEVOの再発1stアルバム『CONVEX AND CONCAVE』はこの店の専売であり、私もこの店でこのアルバムを買っている。

PEVO - CONVEX AND CONCAVE

PEVO – CONVEX AND CONCAVE

 聞けば売り上げも好調。2012年10月8日に高円寺HIGHで行われた、PEVOによるヴォルキス・プロラデューク返還の儀式は、チケットが売り切れたためUstreamでも中継された。それを見た人たちが、いそいそとアルバムを買い求めに来るのだそうだ。何を隠そう、私もその一人であった。通販でも取り扱ってくれるので、中野は遠すぎるという方は、メカノ宛にメールをすれば、入手手続きを教えてくれるはずだ。

 Link > shop MECANO

 このPEVOの1stが最初に発売されたのは、1996年10月5日。当時、ヴォルキス・プロラデュークのマネジメントを行なっていた事務所と、ディスクユニオンとの協力によって設立されたDIW/SYUNレーベルから発売されている。レーベル設立のきっかけは、ヴォルキス関係のタイトルを売りまくる、突出した店舗がディスクユニオンにあったこと。その店舗の店長が、現メカノ店長の中野泰博さんである。

 中野店長がディスクユニオンを辞め、メカノを開店したのが2005年6月。その直前のタイミングで、すでに廃盤になっていた1stは再プレスされ、今のようにメカノ専売品として売られていた。しかし、その在庫も払底し、気がつけば中古価格も高騰。そこでジャケットを新しくデザインし、音源もミックスし直して、新たに1曲追加したのが、今回の再発盤なのである。

PEVO1号(左)、PEVO4号(右)

PEVO1号(左)、PEVO4号(右)

 メカノに着くと、PEVO星人は律儀な性格なのか、それとも他に何か用があったのか、約束より早い時間から来ていたようで、中野店長と意味の分からない数字で会話していた。

 地球にいるPEVO星人の中でも“スポットマイスタッフェン”という名の要職にあるらしいPEVO1号は背が高く、痩せ型で、腰が低く、礼儀正しい。今回新たに招集されたPEVO4号はガタイがよく、関西弁のイントネーションが混じった日本語を話すせいか、陽気な印象を受ける。再発盤のジャケット・デザインを担当したのも4号だ。

 我々は店頭でそそくさと撮影を済ませ、中野ブロードウェイ2階の喫茶店「A-ライセンス」に移動して取材をはじめることにした。

 それにしても中野ブロードウェイを往く人々は、宇宙人が白昼堂々と歩いているというのに、誰一人として気に留める様子もない。一体ここはどういう街なのだろうか。

 この取材は2012年10月28日14時頃より、約2時間に渡って行われた。