僕はいい齢をして一人で外食に行けない。知らない人が沢山いる中で食事ができない。すぐ気持ち悪くなってきて帰りたくなる。とにかく居心地が悪い。そういう困った体質である。昔から。

 その理由を考えてみると、得体の知れない人たちが得体の知れない思惑のもとに作った得体の知れないものを得体の知れない人たちが食べている不気味さ。これに尽きる。例えば最近なら、仰々しい文字がプリントされたラーメン屋の看板の下に、ぞろぞろと人が並んでいるのを見るだけで気持ちが悪い。重症だと思うよ。僕も並んでいる人も。

 そこに元日からカレーランチをやっているインド料理屋があるという話を聞いた。元日からやっているくらいだから、もちろん年中無休。向こうから来た人たちが開いたお店には、そういうところも結構あるらしい。と言うことは、たぶんお店の人の生活拠点になっていて、彼らが普段食べているのに近いものがお店にも出ているんじゃないか。

 このあたりは自分に都合のいい妄想である。マクドナルドが安全であるというのと同じように、問題はその妄想を信じられるか否かであり、ならば外食チェーンの振りまく妄想よりもよほど信用できる気がした。なにせ自分に都合のいい妄想だから。

 ただ具体的なところで言うと、エスニック系のお店で出てくるライスは長粒種である。これはポイントが高い。外食チェーンの「国産米」なんて今時まったくあてにならない。

 というような事から勝手にワクワクし始め、その勢いが落ちないうちにと、前述の元日からやっているインド料理屋に行ってみた。普通の民家にあるようなサッシの引き戸をガラガラッと開けると、蕎麦屋か居酒屋のような作りの、まったく装飾品のない室内にインド人がたくさんいて、小さいブラウン管のテレビにDVDプレイヤーをつないで、綺麗なお姉ちゃんの踊っている姿を映しながら、皆せっせと仕事していた。これは嘘がない!

 というこの判断も妄想でしか無いが、そのおかげで気持ち悪くなって帰りたくもならなかったのだから問題はない。出てきたランチも、やたらナンがでかかったり650円だったりして素晴らしかった。おいしいカレーは他にもあると思うがそういう問題じゃない。

 さらにその勢いに乗じて、ちょっと前に出来て気になっていたネパール料理のお店に行ってみた。お店の家の子と思しき就学年齢前の女の子が、母親と思しきお店の人にテレビの前に連れてこられて、やっぱりインドの綺麗なお姉ちゃんが踊っているDVDを見ながらダーダー言っている。これは信用できる!

 という感じで徐々に信用できるお店が増えていき、最近、家で料理していない。明日はタイ料理屋の予定だから、おそらくインドの綺麗なお姉ちゃんは踊っていないだろう。それでも平気なら、僕はこの調子で南アジアを制覇できるのではないか。野望膨らむ。